終日暖気

    *大抵ネタバレしてとんちんかんな映画の感想など*

    再読 チボー家の人々  

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    「またチボー?」と子に呆れられるほど、ご飯を作りながらとか、みんなが朝食を食べてるあいだとか、
    出勤前とか、掃除の手を止めてこっそりとか、暇(笑)を見つけてはちょこちょこ読んでいます。

    20年以上経ってしまったし、もう昔のようには楽しめないのでは…なんて思ったのですけど、なんのなんの。
    どんどん進みます。あっという間です。
    やっぱりこの作品はものすごく面白い!!

    古本屋さんで頼んだのが届いたので、まずは「灰色のノート」と「少年園」を読了。
    あぁ、こんなだったっけなぁそういえば…なんて思い出しつつ、緻密な心理描写、人間描写にあらためて唸っています。
    訳が本当に素晴らしいのだと思うわ。

    たとえば、読了した中でなら十代のナイーブで頭でっかちで清廉で逼迫しているかのような感情の高まり。
    胸のうちで常にわきだしてくる叫びだしたいような焦燥、反発、不信。
    永遠に失われた無垢、新たに持ちえた意思。芽生え始める社会意識、自分と世間との距離感。異性というもの…

    仰々しさのない自然な心の動きの描写にすっと惹きこまれてしまいます。
    これは、登場人物たちの性別や年齢や立場に関係なく、
    長い物語の最後の最後までひじょうにニュートラルな感覚で常に鋭かったはず。
    だからこちら側も客観的にあらゆる人物に寄り添っていくつもの視点を持つことができる。


    昔好きだった登場人物の魅力がわからなくなっていたら悲しいなー、という心配もまったく無用でした。
    読み始めてすぐ自分がどこでアントワーヌが好きになったか思い出しちゃった(笑)
    私もジャックみたいにアントワーヌに迎えにきてもらいたいと切望したんだわ。
    そしてすぐに兄貴に対するあこがれを飛び越えて、こんな男が好きと思った。
    ジャックより9歳年上のアントワーヌ。彼は、仕事(小児科医)がとても好きで、実際仕事に向いていて研究熱心、
    腕がよく野心があり、自信に満ちていて意志がとても強い。
    現実的だけどなかなかロマンティスト、ある意味エゴイスト、
    安楽死、尊厳死の問題など内心で悩み不安を覚えることがあっても決して表には出さず、
    わりに尊大だし、いつも正しい人間というわけでもないけれど、でも、とても魅力的だった。

    今読み始めた「美しい季節」では、恋をしている男の意外なほどの可愛らしさがよく出ていて面白い。
    私、恋にやぶれて思わず泣き崩れる男性というのを見たのって(読んだんだけど)
    チボー家が初めてだったんじゃなかったかなあ。

    青春小説のような感じで始まるけれど、
    社会と人間を見つめる冷徹な眼差しはエピローグでその精神が昇華されるまで終始一貫崩れることがない。
    そして常に魂の誠実さ、精神の美しさが感じられるというのも素晴らしいです。

    社会というもの、人間というもの、人の一生、生き方、死に方についてなど、
    意見の一致を見、互いに心からの信頼と友情を確認するということをついに果たせぬまま、
    戦争によって永遠にその機会を奪われてしまう兄弟。
    軍医として戦場に赴き毒ガスにやられたアントワーヌは、最期まで自分の病状を医師らしく克明に分析し、
    孤独と苦しみの中で心乱れながらも冷静に、そしてかなり率直に日記をしるし、
    深い思索のすべてを弟の遺した幼い甥っ子に託そうとする…

    私、当時、アントワーヌと一番話が合う!くらいに思っていたのじゃないかしら。
    本当に理解しているかどうかは怪しいとしても、やっぱり熱くなり夢中になり感銘を受け、
    あれこれ考え思い悩むという読書経験はいいものでしたわ。

    そして、若いときって心おきなく没頭できるまとまった長い長い時間があったんだなーと。
    ま、今も無理やり捻出しちゃいますけれども。
    子もいつかそんな本に出合えればいいと思います。
    で、私は続き続き♪

    category: その他の感想

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