終日暖気

    *大抵ネタバレしてとんちんかんな映画の感想など*

    めぐり逢う朝  

    20121031_73303.jpg

    『TOUS LES MATINS DU MONDE』 1991年 フランス

    初見。
    わかりやすくギヨームさん目当てで鑑賞し始めましたが、あら、ロクサーヌとシラノだわ♪

    と、まぁそれはそれとして、監督の画のこだわりには唸りました。
    そこに現れるのは絵画のような世界。
    たとえばその陰影、質感はまるでレンブラントです。素晴らしい~。

    さらに古楽器の音色。
    ヴィオール(ヴィオラ・ダ・ガンバ)って初めて見ましたが、7弦もある!
    弓の持ち方はコントラバスみたいな感じかしらん?

    「すべての音はピアニシモに向けて終わるのだ」

    そうジェラール・ドパルデューが言うのを聞きながら、いったいどんな話かと見入ったのですが。
    世俗にまみれた私は、はっきり言って隠遁生活しているコロンブがどうやって食べていってるのか気になって仕方なかった!(ダメダメ)
    せめて何度かコロンブ自身がおいも掘ってるシーンとか、薪でもを割ってるシーンを入れてほしかった。
    だって、強い信念のもと俗世間から離れ田舎で自給自足してるようでしたから、それならそれで力づよい「生活」のシーンは必要だろうと思って。(まぁ、馬は売ってたけど)生きてるんだし。
    働いてるのはいつも娘さん2人だけで、コロンブは掘立小屋に籠って死者(若くして亡くなった愛妻)と語りながらずっとヴィオールを弾いてるのですが。
    掘立小屋を作ってくれた職人さんや、新しいヴィオールを作ってくれる職人さんにだってお代を支払わなきゃならないけど、どうしてたんだろ?とか。(そういう映画じゃないのはわかってるけど気になるのだ!)

    妻の亡霊も、決して娘の幸せについてなどは語らない。いつもコロンブと妻、二人の世界。なぜなら、死者との対話は己との対話だから。
    妹は明るく逞しく家を出て行けてホッとしたけれど、マドレーヌの人生は!?生活は??
    父の娘として立派な演奏者でもある彼女が、一度でも自分自身のためにヴィオールを弾いているシーンがあっただろうか(怒)あんな妄執の塊みたいな表情になってしまって…。ほんとに芸術家っていうのは因果な…。

    この物語は、師弟の確執、音を奏でるについての考え方の相違が描かれてもいるわけですが、

    「あなたは楽器は弾けるが音楽家ではない」

    と、冷たく言われてしまったとき、弟子入り志願でやってきたマレは17歳。
    さらに、ベルサイユで弾いてしまって師に激昂され楽器をぶち壊され決別したときが二十歳。
    ハタチで実力もあって上昇志向でない者がいたらお目にかかりたいですけども。
    師匠はあくまで厳しい、ていうか偏屈。

    それより、弦楽器を雨に濡らしたり、叩きわったりするものだろうか。音楽家が。若造に腹が立っても、楽器はぜんぜん関係ない。奪い取って渡さないならわかりますけど、「楽器は音楽ではない」から壊してもいいの?と、ここが最も受け入れがたかった。
    音楽家がどれだけ楽器を大切にするか知らないんじゃないのか。とさえ思ったな。

    「言葉で語れぬものを語るのが音楽です」はものすごくよくわかるけれど、「だから俗世のものではない」は考え込む。
    「音楽は死者への贈り物。言葉なき者たちへのささやかな慰め」、それもわかる。
    かつて自分を愛し尽くしてくれた女を苦しめた上に死なせた罪を悔い、人生を振り返り、師の「音楽」を理解して初めて本物の師弟になれたコロンブとマレというのもわかる。

    でも、それでは「音楽」は「生者への贈り物」とはなりえないのだろうか。師匠の憎む俗世間で生きて苦しむ者たちへの慰めには?
    師がもしも妻を亡くしていなかったら、彼の「音楽」はどういうものになっていたのだ?そこへ弟子入り志願のマレがやってきたら?

    何より、「わたしの相手は冥界にいて年を経た人ばかりだ。わが曲をこの世の人に聴かせて語り合いたい。それが願いだ」というコロンブの独白。
    それって、世俗で生きるということじゃないのか。伝えていくってことはそれなしには無理じゃないのか。
    どうも師匠のエゴという部分が、あれこれ気になるのであった。
    やはり俗人には一度見たけでは到底理解が難しいので、まず原作を読むことにしよう。

    役者さんはみなうまいです。コロンブのジャン=ピエール・マリエルは、寡黙なんですが喋るといい声!
    つい気になって見てしまうのは演奏中の左手なんですけど、子ども時代のマドレーヌお嬢ちゃんを演じてた子は楽器をやってる子なのかな。実際に弾いているようにしか見えなかった。
    さらに、お目当てのギヨームさん、のっけで弾く2曲、ものすごく練習したんじゃないかしら。自然な感じで音に合わせて左指が弦を押さえていて素晴らしい。(師匠については言うまい。監督・・・とだけ言いたい)
    お顔は、意外にパパと目が似てるんだなぁと思った次第。色は違うようだけど…。繊細というより素朴な表情をする若くぴちぴちのギヨームがのっしのっしと歩く姿がとても良かった。






    category: 映画感想

    tb: --   cm: 0

    コメント

    コメントの投稿

    Secret

    プロフィール

    最新記事

    最新コメント

    月別アーカイブ

    カテゴリ