終日暖気

    *大抵ネタバレしてとんちんかんな映画の感想など*

    ランジェ公爵夫人  




    『LA DUCHESSA DI LANGEAIS』 2007年 フランス・イタリア

    初見。これは…むちゃくちゃ面白かったです。なんじゃこりゃ~~。

    元ナポレオンの部下にして、アフリカ奥地まで探検にも行った英雄モンリヴォー将軍。
    直情的な男である彼を、獲物を狙う眼差しで吟味したあと即行動に移すランジェ公爵夫人。

    社交界においては「英雄だが、陰気でつまらない」と揶揄される男に興味を持ち、脚本、演出、主演女優をこなす監督でもある女は、常に主導権を握りながら、彼自身そして己自身を引きずり出す悦びをゆっくりと味わうことにするのです。
    彼女の感じる官能、いかばかりか!

    無骨で洗練とは無縁の男の素直な反応に応じて台詞や演出を変え、時に本音を品よくまぶしながら己の美学を貫き、欲望を満たしていく女。社交界には見当たらない新鮮な男だもの、時間をかければかけるほど彼女も満たされるはず。同時に自由を感じていたかも…

    焦らされ翻弄される男を演じるギヨーム、うまい!!そして、将軍たらいちいち言うことが可愛い。その風雪にさらされたごつい岩のような風貌もとっても魅力的。(若いときのハンサム顔もいいけど、やはりこの岩石ちっくな渋顔のほうが数倍素敵である。いかにもいかにも残念でならないギヨームさんだ>涙)




    「体面ですって?勘違いなさらないで」の言い方が素敵。彼女の求めているものがわかるトーン。
    めったに触れ合わない二人だけに たまに触れたときは見ているこっちがドキーっとしちゃって、それがまたよいんだなぁ。

    一幕。世俗的に抵抗。二幕。宗教的に抵抗って(笑)
    この作品、監督の(バルザックの?)きわめて客観的な注釈(でもないか)が入るのも面白い。
    いつまでもかみ合わない二人ですけど、怒らせたり喜ばせたりおさらいしたり…で、冒頭の「タホ川の流れ」がくるんですねえ。ここにきて「音楽と宗教と愛は高貴な魂が心情を吐露する必要があるとき三つの形で同じ事柄を現しているのでは?」という台詞が思い出される仕組み。いいわぁ。
    「宗教論争は3か月続いた」って、もう~~^^;
    確かに宗教論争だ。気長い恋だ。耐久力勝負の肉食人種だ。




    しかし、余裕のあった女が苛立ちはじめたとき、主導権はいつの間にか男に移りつつある。
    もっとも、これもぎりぎりまで味わった女が次に自分に課した三幕目のように感じないこともない。
    「別になにもしません」
    実力行使に出たあと、そう言い放つ男。あなたは触れてはならぬ斧に触れたのです。
    夫人は、最高の幸福を味わったのでは。ここまで待った甲斐があった、これこそが自分の追い求めたもの、と。
    男も自分の土俵ではその魅力を最大限に発揮する。このシーンでの男の匂いたつ色気。女の背中で見せるギヨーム・ドパルデューの眼差しもまたいいの。
    サロンに戻った彼女の表情!!世界の色彩さえ変わってしまっている。女優さんうまい!
    そこからはもう公人としての演出など必要なし。心のままに、女のもとへ通ってこなくなった男への感情に溺れるのみです。
    可愛い姪のために理性的で上流階級な助言をくれる伯母(相当な魅力の持ち主!)は、しかし、若い女の気持ちもすべてきちんとわかっているはず。

    5年後のマヨルカ島で、男の気持ちを聞いた女はそれこそ恋の棺を埋めてすべてを終わらせる。悲劇だが、おそらくは悦びのうちに。(原作ではどうなっているのか、ここの女の気持ちを男であるバルザックはどのように描いているのか読んでみないといけないなあ。)

    「お優しい方ね。お若い頃の恋愛経験が女性への寛大な態度を生んだのですわ」
    「寛大ではない」
    「本当に?」
    「女がなんでも喜ぶだけ」
    ランジェ夫人と、常に穏やかなヴィダム・ド・パミエ(ミシェル・ピコリである。伯母と共に魅力的!)の会話にはさすがに一刺しくらったような心持ちになりましたが。

    「前は女だったが今はなんの価値もない。子供のときの絵本のように忘れてしまうんだな」
    「ああ。もはや一篇の詩でしかないからな」
    バルザックったら…。一応、復讐なのかしらやっぱり。
    しかし、むちゃくちゃ面白かった~~。




    どうも、『ベルサイユの子』のギヨームを見てからすっかり惚れてしまった。
    昔『ポーラX』を見たときも好きだとは思ったけど、2006~2008年あたりと思われる時期のギヨームのごつごつした老成した風貌が一番いいな。なんて素敵なんでしょ(T_T)(T_T)なんでもういないんでしょ。

    category: 映画感想

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