終日暖気

    *大抵ネタバレしてとんちんかんな映画の感想など*

    デタッチメント 優しい無関心  

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    『Detachment』 2011年 アメリカ

    ずっと見たかった作品。DVDが出ていたので早速借りました。

    はぁ…。良かった。とても良かった。

    ヘンリーは、エイドリアン・ブロディ以外考えられない。

    現代社会の諸々の荒廃の描写は、まったくよそ事ではないリアリティと重さと痛みを感じて胸が塞ぐ…
    といって無責任に問題を投げっぱなしにはしていない、そんな作品でしょーか。

    いつの間にか蝕まれて閉塞状況に陥っていく精神。
    アッシャー家は生きていたんだよ。形はあっても中身はない。公園の子供たちはどこへ?
    自らが解放される瞬間はいったいいつ?今を乗り越えるにはどうしたら?失敗だ。大失敗だ。
    君は大切な存在だと伝えなければ。教師の責任はあまりにも重い。


    主に問題校の立て直しに定評があるらしい国語教師のヘンリー。
    金のためと割り切って頼まれた土地土地で臨時高校教師をしながら、
    自宅近くの介護施設に入院中の祖父を見舞う日々。

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    彼は、激昂もしないし、熱い情熱と信念に基づいた教育論で生徒を自分に惹きつけようとするわけでもない。
    ただただ、教室内に秩序規律を構築して生徒を集中させ、物を考えさせることのできる技術屋的プロフェッショナルに徹しているだけ。どこかゆらりと冷めている。

    また、他の教師同様、疲れきった孤独な現代人でもある。
    (同僚教師を演じるルーシー・リュウがとても良かったわ。ジェームズ・カーンも)
    自分が内に抱え続けているものをうまく均すので精一杯、他人にかまう余裕がないのも本当。
    十代は敏感だから、秩序の保たれた中でのヘンリーの言葉は耳にきちんと届くし、冷めてはいても冷淡ではない老成したヘンリーの人間味を自然に感じ取ることで、クールダウンして落ち着けるのですけど。
    「僕も昔は怒っていたからね」。まさしく。自分も十代は怒りに満ちみちていた。


    そんな彼が、深くかかわるまいと思っていたのについ手を差し伸べ、まともな感情をストレートに注いでしまった人間と、教師という立場ゆえにあまりにも運悪く注き損ねた人間、そんな二人とたまたま出会ったことで起こる彼自身の変化が繊細さに溢れたタッチで描かれていました。

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    祖父へのアンビバレントな思いをうまくコントロールして、優しい嘘をつく(これもまたアンビバレントな優しさではある)ヘンリーには涙が出ますけど、これは彼がエリカに出会ったからこその変化かもしれない。
    エリカが朝食を作るシーンも鼻の奥が痛かった…。安心感が年相応の幼い顔いっぱいに広がっているから。
    ヘンリーが自分と彼女を無理やり引き離すときのエリカの絶叫には胸を引き裂かれるし、黒ケーキをゆっくり食べるメレディスの絶望もどうにもたまらない。

    耐えがたい憂鬱を打ち砕く、苦悩のなかの一筋の光とはいったいなにか。
    これもちゃんと見せている映画と思いました。
    エリカの検査結果はどうだったのだろうという心配はあるけれど、家族が一緒なら大丈夫だ。

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    category: 映画感想

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