終日暖気

    *大抵ネタバレしてとんちんかんな映画の感想など*

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    別れの朝  



    『Le Petit matin』 1970年 フランス

    1940年のフランス南西部。
    ナラ屋敷と呼ばれる広大な美しい邸宅には放し飼いの馬たち…
    しかし、屋敷の当主ポールは愛する妻を亡くして以来、彼女の思い出と愛娘のニナの成長だけが楽しみで
    もはや零落した家を再興する気力は残っていない様子。
    同居する妹のエヴァも夫に自殺された過去を持ち、一人息子ジャンを溺愛するばかりの偏屈で狭量な哀しい女となり果てている。
    どこか歪んだ斜陽一族。
    ニナは幼いころからずっと一緒のジャンを愛しているが、ジャンは彼女の気持ちには応えられない。
    せっかくの姪の結婚式も、相手がユダヤ人男性ということでエヴァは激昂、激しい呪詛の言葉を吐いて式の雰囲気を台無しにしてしまう。
    そんなさなか戦争が勃発。
    ドイツ侵攻によって瞬く間にナラ屋敷も軍に占拠されてしまうのだったが…

    **************************************************************

    初見。またまたマチューくん目当てで観賞。
    あれ?これは女性が書いた話では…と思ったらやはりそうでした。
    ただし脚本はジャン=ガブリエル・アルビコッコ監督によるもの。
    さらに撮影は監督の父上であるというキント・アルビコッコ。

    かなりロマンティックでだいぶ激しく相当デカダン。
    なのに撮られている画にはつねに静謐さに支配され、哀しくひんやりとした空気が漂っている…
    夜明けの朝もや、霧のかかったような青むらさき色の時間が多いからかしら。
    荒れた海もどこか寒々しく、林の間から射す逆光の眩しさもはかない。
    うーん、なんだかクセになりそう。
    綺麗なのです。邪魔せず物語を盛り上げるフランシス・レイの音楽も素敵だし。
    その上主演はうら若き美男美女。白馬だし、没落貴族だし、お屋敷だし。
    そこにナチが乗りこんでくるし。






    乗りこんできた将校はやけに魅力的だし。
     (もちろんマチューくんである)

    主人公のニナは、スカーレット・オハラのような激しさを持つ美少女。
    母親の愛した馬を乗りこなし、父を心から愛し、気に食わないことがあれば手も出るし
    意地悪なことばかり言う叔母とは真っ向から対決する。
    そうねぇ、ちょっとじゃじゃ馬かしら。でもとても気が強くて率直で魅力的。
    ニナを見守るアクティヴな修道女も素敵でした。
    戦争がはじまり、自分の愛馬を乗りまわして笑っている敵国の若い将校に腹が立って仕返ししたりするニナですが、いつのまにか憎むべき彼との遠乗りが楽しみになっている自分に愕然とする…。
    (まあねぇ、マチューくんですからねぇ。ヒロインがつい目で追ってしまうのも説得力ありすぎなのねん)

    この物語、のっけから悲劇の匂いが強いので、惹かれあっていく男女を見ても
    どうなってしまうのかとハラハラ…。











    従兄弟のジャンを愛するニナですが、ジャンはヴァンサンという美青年を愛しているのね。
    ジャンも気の毒にそのことを苦しんでいてかなり歪んでしまっているのです。
    ヴァンサンも何かを壊された青年のようで、二人とも本当は戦いに参加したいのだろうけれども、恐ろしくてずるずると二人だけの世界へ逃げてしまう。
    そして逃げたのは彼らだけではなかった…

    がちがちのナチ信奉者である親衛隊のカール中尉は、颯爽と、そして笑顔で非人間的な面を見せながら…、そうねぇ、その似合いすぎる制服のごとき暗黒美というのかしら、そんなオーラをまとって登場するのですけど。(マチューくん似合いすぎ)
    快楽と征服は等しい、とか、女は馬と同じでまずは調教とか、意気揚々と侵攻してきたナチの男どもはしょーもないことを言って乾杯して笑ってるのですが、徐々に形勢は逆転していくわけです。
    それとシンクロするように、中尉はフランス人の小娘ニナに本気になっていく…。弱い男と思われていた当主は逆に機を見て静かにレジスタンス活動を支援したりするしたたかさを発揮してみたり。



    男たちのナルシスティックな葬送ごっこ、何度も弾かれるベートーヴェンのピアノソナタ「月光」、ジャンとヴァンサンが興じる人形撃ち遊び(わざわざ女装させてあるのも何体もある)、親衛隊の将校たちの表情にのぞくなんとなくひっかかる違和感…すべてが頽廃に彩られているのですが、センチメンタルで異様な甘さもあるのよね…
    親密になっていくニナとカールの早朝の遠乗りはひたすら美の世界なのですが、二度ほど挿入される幻想は死んでいるカールの姿だったりする…
    愛し合ったあとニナは戯れとも本気ともつかない顔でカールを撃つ真似をし、カールはカールで「撃つかい?殺してくれ、それが望みだ」と言う。
    実際許されない関係のふたりには最初から明るい未来などありようもなく、まだ若い中性的な美少年といった風情のふたりの表情にはこちらの胸が痛くなってしまう。



    この映画は、人間のどうしようもない弱さというのを描いてもいて、そこがせつないのです。
    ポールの、エヴァの、ジャンとヴァンサンの、そしてカールの…。

    この弱さをそっと両手ですくいとっているような、悲惨な結末を迎える彼らを責め立てるのとはまったく違う監督の静かな視線のよーなものを感じてしまうお話でした。


    最初なかなか図々しく冷たい貴公子然として登場するマチューくん、やっとドイツ語が聞けた!と思いましたが(フランス語も普通に話してくれますが)、エゴン・シーレの時のような渋さはまだなくて声が高いのでした。ちょうど二十歳くらいの映画やから、少年ぽさと青年らしさがほどよく混じり合った感じ。素っ裸になるシーンが多いですがぜんぜん変な感じがしない。

    一方のニナを演じるカトリーヌ・ジュールダンは、懐かない野生動物のような敏捷さと中性的な美貌が好みだなあ。可愛い。彼女の魅力を余すところなく捉えた映画でした。
    結婚式のときの、クラシカルでシックな茶色のリボンのついた繊細な風合いの帽子がとてもよく似合ってました。あの帽子、欲しいな。とても素敵だったわ!

    大事な登場人物の一人である孤独な女エヴァを演じるのが美しいマドレーヌ・ロバンソン。「埋もれた青春」よりなによりアラン・ドロンの継母役ですわ、「フランス式十戒」の。
    今回もかなり激しい困った女ながら悲しみに満ちた人生を感じさせる眼差しがとてもよかったです。
    「またあの頃に戻れるのね、幸福でも不幸でもなかった子供の頃に」という台詞が印象的だった…











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